こんにちは、さいたま市北浦和 歯周病専門医が在籍する歯医者、よしの歯科クリニックです。
皆さんは、”サイレントパンデミック”てご存知ですか?これは、私たちが気が付かない間に静かに感染が広がっていく事を云います。特に薬剤耐性菌がそれです。今年の夏に「サイレントパンデミック・薬剤耐性菌の脅威」に関する記事が、毎日新聞電子版及び福井テレビで放送されました。
これは、非常に歯周病治療とも密接に関係するところで、以前のコラムにも歯周治療と薬剤耐性菌に関して何度も記載させて頂いております。
もう一度、復習させていただきます。我々の身体は、数多くの常在細菌に守られ、外から来る病原菌などが体内へ侵入するのを防いでくれています。つまり、我々は、細菌と云う微生物と共存しながら今日まで進化を遂げ生きてきたわけです。しかし、身体を守ってくれている微生物を全て排除してしまうと我々にとって有益な細菌(善玉菌)も排除さてしまい、不利益を生じ正常に生きてゆくことはできません。これは、お口の中でも同じことが言えます。例えば、歯周病の治療で多量に抗生物質などの薬を使用し、それだけで治療してしまうと、一時的に症状は改善されますが、再び歯周病を生じさせる歯周病原性細菌(悪玉菌)が再増殖してしまいます。また、歯周病原性細菌が堆積しフィルム状の歯垢を“バイオフィルム”と呼びますが、このフィルム内に薬剤が浸透しにくい性質があるのです。ですから、器具を用いて機械的にバイオフィルムを壊さない限り、歯周病原性細菌を取り除くことは不可能なのです。結果、長期観察するとお薬を使っても使わなくても同じ治療結果になる事が科学的に証明されています。だとしたら、お薬を可能な限り使わない治療の方が身体には優しいわけです。
北海道大学の藤豊孝准教授によれば、“世界で深刻化しているのは、人間が過剰に抗菌薬を使い耐性菌の発生や増殖を促している。抗菌薬がきっかけで病原菌が耐性を獲得してしまう。その薬に耐性を持たない病原菌を減らすことはできるが、同時に耐性のない常在菌(善玉菌)も減ってしまい、耐性菌が増殖しやすい環境になってしまう。
高齢者や他の疾患などで免疫が低下している人が耐性菌に感染して発症すると、使える治療薬が限られたり、無いことから、治療が難しくなる。健康な人は感染しても全員発症するわけではないが、残った耐性菌が他者にうつり、世界中に広がるという事態が起こっている。抗生物質などの抗菌薬が効かない「薬剤耐性菌」のまん延は世界共通の課題である。2050年には、世界で現在のがんに匹敵するほどの死者が出ると予測されている。“と述べている。
したがって、安易に歯周病の治療をお薬で簡単に治そうとしないで下さい。なぜなら、お薬だけで歯周病は治せません。この事も科学的に証明されています。また、私がスウェーデンから帰国する際に教授から抗生物質の使用に関しては、慎重に扱いなさいと助言を頂きました。なぜなら、日本は世界的にみて耐性菌保菌者が圧倒的に多い国の一つだからです。ですから、お薬は、決して魔法の万能薬では無いことを我々が受け入れる必要があります。
歯周病の治療で抗生物質などのお薬等を使うケースは、ごく限られた場合のみです。これは欧州歯周病学会のガイドラインにも記載されております。我々は、お薬を使わずに歯周病原性細菌(悪玉菌)を減らし善玉菌を増やす努力をすべきではないでしょうか。
歯周病でお困りの方、一度歯周病専門医を受診してはいかがでしょうか。
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