こんにちは、北浦和のよしの歯科クリニックです。
皆さんは、ピロリ菌て聞いたことありますか?
今回のコラムは、先日、”胃がん予防へ中学生のピロリ菌検査”と題する記事が新聞誌に掲載されたこのピロリ菌についてお話をして行こうと思います。
佐賀県では、10年前より中学3年生を対象にピロリ菌の検査•除菌の助成事業を行なっているそうです。この結果、2016年のピロリ菌陽性率が3.6%であったのが、2024年では1.3%へ減少していだそうです。ピロリ菌は、乳幼児期(0歳〜6歳まで)に、親から口や唾液(ツバ)を介して感染することが多く、この細菌が胃に定着し、一部は胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因となることが分かっています。放置すると無症状のまま慢性胃炎となり、数十年後の胃がん発症のリスクを高めます。そこで、子供が親になる前にピロリ菌を除菌し、次の世代への感染も減らす効果や子供の検査をきっかけに親も検査を受け除菌をする効果が期待できるそうです。
実は、このピロリ菌は、歯周病患者さんとの関連性が強く示唆されているのです。
そこで、このコラムでは、2022年にヨーロッパ歯周学会誌に掲載された「歯周病とヘリコバクター•ピロリ菌感染が消化菅がん死亡率に及ぼす影響」を調べた下記の論文を見ていきたいと思います。
“Periodontitis, Helicobacter pylori infection, and gastrointestinal tract cancer mortality
Cheng-En Sung et al. J Clin Periodontol. 2022”
歯周病が、多くの消化管がんの原因と考えられているヘリコバクター•ピロリ菌感染を引き起こしていることが示唆されています。
この研究では、歯周病とピロリ菌感染に関連した生存転帰との間に関連性があるのか否かを明らかにする目的で行われました。
(材料と方法)
研究対象は、NHANESIII(米国国民健康栄養調査)データベースで歯周病診査とピロリ菌血清検査の双方を受けた20〜90歳の4955名を対象に、歯周病とピロリ菌血清陽性(ピロリ菌感染陽性)の関連を解析しました。また、ピロリ菌感染の有無別に、歯周病と消化管がん死亡との関連を検討しました。
(結果)
歯周病でない健常者と比較すると歯周病の人は、ピロリ菌感染が有意に増加していた(OR = 1.271, 95% CI = 1.177–1.372)。
更に、歯周病を伴うピロリ菌感染者は、全死因死亡、全がん死亡、消化管がん、胃がん、大腸がんの死亡リスクを有意に増加させることも明らかとなった。
(結論)
歯周病の人は、歯周病の無い人に比べて、消化菅がんや大腸がんの死亡リスクが高まり、さらにピロリ菌感染のリスクが高まることが分かりました。
また、歯周病でピロリ菌に感染している人は、全てのがん、消化管がん,胃がん、大腸がんの死亡リスクが高まることが分かりました。つまり、歯周病とピロリ菌感染の相互相乗作用により全てのがん、消化管がん、特に大腸がんなどの癌を発症するリスクが高まることが言えそうです。
このように、歯周病は、ピロリ菌感染を助長し、消化管がんの発症リスクを高めます。
コラム 歯無しのはなし43 【お子さんの口腔細菌叢】でお伝えしたように、乳幼児期にその人の口腔内細菌叢の構成が確立します。できる限り早期から歯周病予防を行い歯周病原菌やピロリ菌を含めた細菌が少ないお口の環境を作ることを強くオススメ致します。但し、決して過度の殺菌だけはしないようにして下さい。なぜなら、お口の粘膜や有害な細菌から我々の体を守ってくれている良い細菌も死滅してしまいます。
歯周病でお困りの患者様へ、一度周病専門医へ相談してみてはいかがでしょうか?
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